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本駒込に一度も降りたことのない市原ユウイチが主義、主張、哀願をつづるブログ。忘れようとしても思い出せないブログ。


by jet-beetle

フェイクファーは嫌いだった。

その時は好きになれなくても、時間が経ってみると「あれ、悪くねぇんじゃね?」みたいなことが人生には多々あって。

そんなわけで今回の特集は98年に発売されたスピッツの8枚目のアルバム『フェイクファー』です。大のスピッツ好きである僕にとって鬼門というか、その後のスピッツとの付き合い方の分岐点になった作品。最近、ディスクユニオンの100円コーナーに『インディゴ地平線』と『フェイクファー』が置いてあって、どちらもMDに録ってあってもう何度も聴き返した作品ではあるのだけど、この機会にと購入(BOOWYのライブ盤とケツノポリス4も同時購入)。

96年に音楽CDというものを買うようになった当初から気になる存在だったスピッツ。『名前をつけてやる』『空の飛び方』『ハチミツ』と、中学生の金無き私は頑張って遡りました。そうした中発売された『フェイクファー』。初めてリアルタイムでリリースされるオリジナルアルバムということで期待は否応無く高まりました。しかしその出来たるや「…あれ?」。感じられなかったのです。スピッツがまとっていたあの魔法のようなドリーミーでやさしくてエバーグリーンなものが。なんとなく嫌な予感はしていました。先行シングルの“運命の人”“冷たい頬”の2曲が今一つだったこと。そもそも98年という年の音楽シーン自体(イエモン、ジュディマリ、B'zなど、当時大好きだったアーティストがことごとく微妙な作品を出していた)。以下、参考文献として2007年10月、『さざなみCD』発売直前の時期のmixi日記から抜粋。


「もうすぐスピッツ2年半ぶりのニューアルバムが出ますね。『さざなみCD』。とにかく今作は先行シングルがことごとく当たりだった。去年出た“魔法のコトバ”は個人的スピッツ史上3本の指に入る名曲だったし、“ルキンフォー”は聴けば聴くほど味が出てくるし、7月に出た“群青”も先行シングルとして非常にバランスの取れた曲だった。と来れば、これはもう必然的にアルバムにかける期待というかワクテカ感は凄まじいものがあるはずなのである。

しかし。何故か一向にスピッツ熱が上がらない。新作を買おうという気持ちが全く起こらない。むしろ「やっぱ『ハヤブサ』は良いなぁ」なんてあらためて感じさせられている今日この頃である。何故か。それはやっぱり『三日月ロック』『スーベニア』と、2作連続で期待を裏切られてきたというか物足りなさを感じさせられてきたからに他ならない。スピッツ語らせると長いよ。興味ない人はこのへんでバイバイ。夜また別の日記アップするから。

アマゾンのレビューでもさんざん書いてきたが、笹路プロデュースを離れて~試行錯誤期~現在の亀田プロデュースというスピッツの流れがある中で、亀田誠治プロデュースによる近年の2作は佳曲もあるものの、全体的に味付けが薄く、スピッツの深さよりもギターバンドとしてのポップさとか解りやすさばかりが目立って、初期や笹路正徳プロデュースの頃の“もや”がかかったようなスピッツの魅力があまり感じられないでいる。スタジオや音作りが変わったからというのもあるのかもしれない。こう書くと頭の固い懐古ファンと思われる向きもあるだろうけど、実際に最近のアルバムを聴いていると「え~?ここで終わり~?もっと深く掘り下げないのぉ~?」と思わされることが多々あるのだ(“春の歌”とか“ありふれた人生”、“夜を駆ける”とか“旅の途中”みたく良い曲は良いんだけどね)。」


この文中にある試行錯誤期がまさにこの98年にあたるわけですが、『フェイクファー』というアルバムはそれまでの笹路プロデュースを離れ、セルフプロデュースで制作した一枚目だったのです。たぶん彼らとしては、有名でこの人に任せておけば大丈夫、というプロデューサーの庇護の下でやっていくことに違和感を感じた上での決断だったのではないかと勝手に想像します。関係あるかは分からないけれど、音やアレンジもロックっぽくザックリした感じに仕上がってます。言ってみりゃ、あんまりポップじゃない。つってもスピッツだからやっぱりポップはポップなんだけど。もともと名曲“ロビンソン”を「ポップすぎる」という理由でボツにしようしたバンドです。それを考えると、ブレイクして2年半くらいして、そういう選択をするのも理解できる気はします。

ただ、それにしても『ハチミツ』や『空の飛び方』のような作品を期待していた中学生の自分にとってこれは少々、残念な作品であったと言わざるをえない。えない。えない。今だったらそんな作品になった背景なんかにも思いを馳せたり想像を膨らませたりしてそれはそれで楽しめるわけだけども、ねぇ? 中学生ですから。“楓”と“フェイクファー”以外はほとんどスルーでした。

そんなわけで、アマゾンに少しだけ載せているレビューにも『フェイクファー』はあまり評価して書いていない(そのせいでレビューの有用性もあまり評価されていないのだけど)。ちなみに、アマゾンには『フェイクファー』以降の作品しかレビューを書いていない。だって『スピッツ』~『インディゴ地平線』までの作品は文句のつけようのない神盤ばかりだから。

で、そんな経緯を経て久しぶりに『フェイクファー』を聴いて、思ったのが冒頭の一文。“エトランゼ”も“センチメンタル”も“運命の人”も“スーパーノヴァ”もいいじゃん。て。そして何より、ジャケットの田島恵理香のかわいさはスピッツのジャケット史上、随一だ。コレだけは発売当時から変わらない。
by jet-beetle | 2009-07-19 21:57 | 音楽